修士2年生の萩原さんには,3年間の研究生活を振り返ってもらい,後輩へのアドバイスをしていただきました.

インタビュアー: 菅原

3年間のラボ生活を振り返って

菅: 萩原さんは,学部生の時から北村研究室にいる修士2年生なわけですが,ここ2,3年の研究室の変化といえば何ですか?

萩: 留学生が増えたことかな.特にここ1,2年は短期留学しにくる学生が増えたよね.それに伴って,ミーティングの時にはスライドを英語で作るようになったし.僕が4年生の時には日本語で作ってたからね.それから,ラボの雰囲気が明るくなったと思う.昔のラボは少し暗いというか,例えば僕が3年の時はみんな無言で仕事して帰るみたいな.それが石川さんとかが去年入ってから明るくなって,今年の4年生が入ってからうるさくなった(笑).賑やかでいいと思うよ.

菅:そうですか(笑).最近ラボでは,例えばウェブサイトを新しくしたりとか色々と研究以外のことも頑張ったりしてますけど,そうような風潮は前からあるんですか?

萩:前から新しいものに触れたり,何か作ろうっていう流れはあったんだけど,人手が足りなくてやらなかったことが多いんですよ.ウェブもその1つだったんだけど,今回Webチームが中心になってやってくれたよね.昔は全体的に腰が重い感じが多かったんだけど,今はやりたいことができてるからいい感じ.北村研究室自体,自分から情報を発信したい人や物づくりをしたい人には先生方がサポートしてくれるし,環境も整っているところだから,そういう行動力のある人にはいいところだと思う.

趣味から研究へ

菅: そういう何か作ったりすることを萩原さんは常にやっているイメージがあるんですけど,それはいつ頃からやっているんですか?

萩: 小学生からかな.パソコンを使って色々やりだしたのは中学生からだね.昔ドラムマニアっていうゲームがあったんですよ.知ってる?ゲーセンにあるやつ.ドラムを模したパッドが並んでて,それを曲に合わせて叩くゲームなんですけど,それを中学の時は毎日のようにやってて,でも毎日やるとお金がなくなるんですよね.それで「作ればいいじゃん」って.

菅: 僕も何度かそのゲームやったことありますけど,さすがに「作ればいいじゃん」とはなりませんでしたよ.結局どうしたんですか?

萩: 実はそのゲームはパソコンでできるクローンゲームがあって譜面を打ち込むこともできるんだけど,入力がキーボードだったんですよ.プレイステーションのコントローラもあったんだけど,あんまり良くなかったんだよね.それでゴムを切ってドラムのパッドを作って,それとスティックの先端に導電性のものをつけて,触れ合ったら通電するようにしとくんですよ.それからプレイステーションのコントローラをジャンク品で買ってきて,そこから配線を伸ばして,入力をマッピングして使えるようにしてた.フットペダルは,100均でポチッと押すと点くライトがあって,それをフットペダルに活用してた.それでうまく動いたよ.でも,新曲が出ると結局ゲーセン行っちゃうよね.

菅: そういう面白いもの・楽しいものを作りたいっていう考えが研究室選びの時にもあったんですか?

萩: それも勿論あるよね.ただ,研究室選びの時は,片平では一度学生が集められて全研究室の発表を見て,それから見学をすると思うんだけど,その時に一気に決まったんですよ.北村研究室の発表はすごくシンプルなものなんだけど,それがこの研究室のスタイルを表してるなと思う.すでにあるものは利用して,例えばコンピュータを使った方が伝わりやすいことがあるなら躊躇なく使うとか.あとは無駄なことは省いて,重要な目的を達成するっていう研究室の色が出てたんだよ.それを見た瞬間ここにしようと思ったよね.それから,当時僕はHMDを持ってて,それで開発をやってますって話を見学の時に北村先生にしたら,「ええやん」って言われて,そのまま決まった(笑).だから他の研究室はあまり見てなかったな.

ICDラボでの生活

菅: 普段から開発をやってる萩原さんでも忙しそうにしてることが多いですけど,どういうスケジュールで研究をしてますか?

萩: 研究と自分でやりたいことをどっちもやると忙しくなるんだよね.これまでを振り返ると,感覚としては1年のうち10ヶ月くらいはフル稼働って感じ.学部生の頃は,そういう研究室での生活の実態ばっかり気になったりすると思うんだけど,ちょっと感覚が違うよね.やっぱり学部生が研究室を調べるときに気になることって,「何時に帰れるのか」とか「どれだけ楽できるか」とかそういうことじゃん.「研究室に入ったら遊べない」とかいうウワサを聞いたりもするし.でもそれは大して重要ではなくて,いざ入ってみると,今まで学部で生活してた時とは全然ちがう種類の面白さとか楽しさがあるよね.そのためなら,今までしてたことができなくなっても,特に気にはならなっていう感じかな.3年生までとそれ以降では全く別物ですよ.

菅: 学部生が気になるところでいうと,研究テーマがどう決まるのかっていう事もあると思うんですけど.萩原さんのプロジェクトのCamCutterは,自分から発案したものですよね.自分で研究を発案して始めるっていうのはやはり難しいんですか?

萩: それはめちゃくちゃ大変だったよ.うちの研究室は,先生からテーマをもらうこともあれば,自分で考えて進めることもできるけれど,後者は難しい.4年生で研究を始めた頃っていうのは,その分野について何も知らないと言ってもいいぐらい知見が無いんだけれど,先生方の頭の中には何がホットな研究かっていうことがあるわけだから当然論文になりやすいのも,価値があるのもそっちなんだよ.僕たちが提案することっていうのは大抵研究し尽くされてることだったりするしね.だから4年生の時は辛かったな.CamCutterができるまで,何個もアイデアを出してはポシャってたし,既存の研究とかを調べてるうちに新規性がないなっていう案もいっぱいあったよ.

菅: それでも懲りずにアイデアを出してたんですか.今もミーティングの度に発案してますもんね.

萩: そう.それが大事なんだよね.研究の世界のことは先生方が一番よくわかっているんだけれど,それでも僕は若い人たちじゃないと考えつないようなアイデアがあると思う.学術的な最先端と,僕たちみたいなディジタルネイティブ世代が思う最先端っていうのは少しズレてると思ってて,その自分たちが肌で感じる情報を先生方に伝えることで新しいアイデアが生まれるんじゃないかって.メンバーのみんなは研究の合間とかにブラウジングとかすると思うんですよ.そこで何か読んでるってことは,絶対に少しは得るものがあるはずで,その中には先生方や他のラボのメンバーが知らない情報あるから,何でもいいから共有した方がいいと思ってて,だからミーティングの時には発表するようにしてるんです.

学部生へのアドバイス

菅: ではここまでをふまえて,研究室のことでアピールしておくことはありますか?

萩: 研究室で3年間過ごしたら,自然に英語が聞けるようになった.コミュニケーションも何とか取れるし,特に勉強もしてないのにできるようになったんだよ.最近は共同研究の先生と英語でミーティングすることが多いからかもしれないけどね.留学生と友達になったりしてることもあると思うけど,彼らが国に帰ってしまうと少し寂しいかな.あとは,先生がサッカーが好きだから,ピザをとって一緒に見たりとかそういう小さいイベントも意外とあるんですよ.先生が忙しい時期だとなかなか無いけどね.

菅: 研究室に入る学部生にアドバイスがありますか?

萩: プログラミングの勉強をするといいって意見もあるけれど,僕はそれはあまり重要じゃないような気がする.やりたくないことを学部のうちにしても仕方がないし,やりたいことがあればそれをやるのがいいと思う.強いて言えば,忙しくなるからお金が必要な人はバイトをしておくことと,スポーツとかで体を動かして健康に過ごしておくことかな.あとは,美術鑑賞.うちのラボはデザインに興味がある人とか,アートの分野の人もいるし,その環境で何もアートのことが分からないよりは,少しは知ってた方がクールだよね.それともう1つ,何でもいいからこだわりを持つこと.何かにこだわりを持ってる人が多いラボだと思うし,それが生きてくることがあると思うから.

菅: 色々な話を聞かせてもらってありがとうございました.僕も知らなかったことがたくさんありました.

萩: 今日ピザ食べる?

終わりに

修士2年生の萩原さんへのインタビューでした.大学院での研究生活の雰囲気がなんとなく伝わったのではないかと思います.