TiltChair

長時間の座位姿勢は,様々な健康上のリスクを高めることがわかっており,座位時間を短くすることが推奨されている.これまでにも,デスクワーク中のユーザに対して姿勢を矯正・誘導する手法は検討されてきたが,そのほとんどはユーザの作業中断を伴うか,ユーザの自発的な利用を必要とするものであった.
そこで本研究では,オフィスチェアの座面を前傾させることで,ユーザの姿勢を誘導するシステムであるTiltChairを提案する. 本システムは,一般的なオフィスチェアの座面下にエアクッションを挿入し,空気圧制御により座面の傾斜角度および変化速度をコントロールすることで,コンテキストに合わせた前傾動作を提示できる.例えば,座面を低速で前傾させることで,ユーザの作業を邪魔することなく座位から立位へ姿勢を誘導できると見込まれる.
本システムによる座面の傾斜がユーザのタスクパフォーマンスおよび着座体験に与える影響について2つの実験を通して調査した.実験結果から,座面の角度を大きくすることでユーザは座位姿勢を維持しづらくなること,傾斜速度を大きくすることでユーザは動作に気づきやすく,許容しづらくなること,傾斜時間を長くすることでユーザの身体的疲労につながることが示された.これらを踏まえ,座面傾斜の角度,速度,継続時間の3つを用いて様々なアプリケーションをデザインした. 最後に,実際のデスクワークに本システムを利用してもらうユーザスタディを実施したところ,本システムによる座面の前傾はユーザのタスクをほとんど干渉しなかったこと,15度程度の身体的負荷の小さな傾斜角度でも立位を促す可能性があることが示された.


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